巻頭言
若い内科医に何を伝えるべきか
林 秀晴
1
1浜松医科大学内科学第三講座
pp.5
発行日 2011年1月15日
Published Date 2011/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101612
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臨床研修医制度が変わって,内科医を目指す若い医師は,地方の大学病院より都市部の大きな総合病院か,救急医療やコモンディジーズを経験できる中規模の病院で研修を受ける傾向にある.内科専門医や各診療科の専門医を目指す医師の一部は,病院での研修後に大学病院の内科各診療科に属する場合も多い.内科医の臨床医学教育に関して思っていることを述べる.
内科が細分化して,内科全体,または病気ではなく人を診ることへの意識が希薄になってきていることは,殆どの内科医が憂慮していることであろう.病歴の聴取に関しては,臨床経験を積むことによって鑑別診断を学んでいけると考えられる.しかし,私が循環器医であることもあるが,基本的な身体所見の取り方の教育が不十分であると考えられる.心不全の診断は心エコーでするのではなく,臨床症状と身体所見から始まるのである.内科専門医でも,心尖拍動の移動,頸静脈の怒張,肝臓の腫大や,背面下部の弱い湿性ラ音を所見として取れない者がいる.拡張不全による心不全が認識されてきて,以前のように駆出率が良いから心不全ではないとは言えないのである.もっとも,若い循環器専門医は,心エコーや冠動脈造影を中心とした心臓カテーテルの技術は,旧い医師とは比較にならない程の技術と経験を持っている.
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