Japanese
English
特集 循環器診療における放射線防護
冠動脈疾患診療と放射線被ばく―CTとPCI
Reduction of Radiation Dose in Coronary CT Angiography and Percutaneous Coronary Intervention
山下 尋史
1
Hiroshi Yamashita
1
1東京大学大学院医学系研究科循環器内科
1Department of Cardiovascular Medicine, Graduate School of Medicine, University of Tokyo
pp.905-914
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101326
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はじめに
診断と治療を目的とした医療被ばくでは,患者に対する線量限度は定められていない.それは,環境被ばくや職業被ばくと異なり,患者には診断・治療による利益があり,適応が被ばくに伴う合併症のリスクと治療利益のバランスで決定され,可能な限り低い被ばくで最大の治療効果を得るように手技が行われることを前提としているからである.このための原則は次の2点に集約される.①厳密な適応の決定,②放射線防護の最適化,すなわち,「合理的に実現可能な限り低減する」“as low as reasonably achievable”(ALARA)という原則の遵守である.
本稿では,著しい技術革新により広く普及し始めた冠動脈CTと,薬物溶出性ステントの登場とともに適応が拡大している経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に伴う放射線被ばくとその低減法について概説する.放射線の影響は,放射線皮膚障害・白内障などの組織反応である確定的影響と,DNA損傷による発がんや遺伝的影響などの確率的影響に大別される.冠動脈CTでは被ばくが広範囲に分布するため,問題とされるのは全被ばく線量に相当する実効線量(effective dose,単位Sv)とその確率的影響であり,一方PCIにおいては,特定の皮膚部位に被ばくが集中するため,最大皮膚線量(maximum skin dose;MSD,単位Gy)とその確定的影響が重要視される.
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