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はじめに
糖尿病は,これまでの多数の疫学的研究から虚血性心疾患(冠動脈疾患)の主要な危険因子として知られている.糖尿病そのものは現在わが国で罹患人口800万人を超えるといわれ,40歳以上の日本人の10人に1人以上が糖尿病ないし耐糖能異常があると考えられ,国民病となってきている.よって,今後わが国で虚血性心疾患の発生率の上昇および重症化の可能性が考えられる.
糖尿病になると冠動脈造影上非常に特徴的なびまん性で石灰化を伴うことの多い血管造影像を呈してくることが多い1).それらのことにより,この糖尿病を合併した虚血性心疾患に対するPCIの臨床成績は,糖尿病を合併しないものに比べ初期,長期ともに悪くなることがよく知られている2~5).よって,この糖尿病合併虚血性心疾患に対するPCIは,その適応,治療手段の選択について特別に配慮が必要と考えられる.
2002年,ヨーロッパ心臓病学会でその大規模研究の成果が発表されて以来,飛躍的な進歩を遂げることになったdrug-eluting stent(DES)は,これまでのPCIの限界を大きく打ち破るツールとなった.これまでに単純病変のみならず,複雑病変としての分岐部病変6),慢性完全閉塞病変7)などに対しても有効であることは示されてきた.そして,さらに糖尿病合併虚血性心疾患に対してもDESは再狭窄率の低い非常に有効なデバイスであることが多くの報告で証明されている8~15).さらに現在はその後の長期予後,そして主として使用されてきたSES(CypherTM:Sirolimus-eluting stent)とPES(TAXUS:Paclitaxel-eluting stent)の臨床使用に際し,その成績として両者に差が存在するかどうか16~19),さらには糖尿病合併冠動脈疾患のなかでも特に多枝疾患患者においてCABGとPCIの両者の臨床成績に差が存在するのかといったことも報告されてきている20~24).また,現在FREEDOM trialというアメリカ,カナダを中心とした2,500例の患者をDESによるPCIとCABGに割り付けしたrandomized trialも進行中であり,今後の成果も期待される.
本稿では,糖尿病合併虚血性心疾患に対するPCIで,これまでのbare-metal stent(BMS)を使用した場合の成績をまず検証し,その後DES時代のPCIの治療成績について論じたい.
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