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はじめに
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因は,有害な粒子やガスの長期間吸入暴露に対する肺の異常な炎症反応に起因し,喫煙が最も多い重要な因子である.最近ではこれらの危険因子によって,肺の様々な病変だけでなく,栄養障害(体重減少,悪液質)や骨格筋の筋量の減少および機能不全といった全身への影響や心臓血管病,骨粗鬆症,うつ病,慢性貧血,糖尿病,緑内障,睡眠障害といった併存症を引き起こすことが注目されている1).呼吸器症状は,完全には可逆的ではない慢性気流閉塞を特徴とする.この完全には可逆的ではない気流閉塞とは,気管支拡張薬投与後あるいは最大の治療を行っても1秒率(努力呼出した時に1秒間に努力肺活量の何%吐ききることが出来るか)が70%未満かつ,1秒量(1秒間に吐けた量)の対予測値が80%未満と定義されている2).この気流閉塞は末梢気道病変(閉塞性細気管支炎)と肺胞の破壊(肺気腫)によって生じ,個人によって各々が寄与する比率は異なる.そしてこの慢性気流閉塞は,進行性であるが予防可能・治療可能な疾患であることが強調されている.不可逆性の気流閉塞とは,気流閉塞が全く改善しないという意味ではなく,喘息のように気流閉塞が正常化することはないが,中等症・重症であってもある程度改善することが示されており,個人によりばらつきが大きく,同一個人であっても臨床経過のなかでも変動する3).この気流閉塞に対する治療,すなわち気管支拡張薬が息切れなどの症状の改善,運動能力およびQOL改善の最も中心的な薬物治療となる.一方,増悪はCOPDの自然な経過のなかでしばしば生じ,死亡や重症化の原因にもなる.危険因子の回避や増悪を予防することは可能であり,COPDは予防可能,かつ治療可能な疾患である所以である.本稿ではCOPDの薬物治療について解説するが,大きく安定期の治療と増悪に対する治療に分けられる.
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