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はじめに
GINA20061)によると,気管支喘息(以下,喘息)は「気道の慢性炎症性疾患であり,多くの細胞や細胞成分が役割を演じている.その慢性炎症によって気道過敏性が上昇し,繰り返す喘鳴,息切れ,胸部圧迫感(胸苦しさ)および咳が,特に夜間や早朝に起こる.これらの発作は通常,肺内部の広範囲な,しかし様々な程度の気流閉塞を伴っており,しばしば自然に,もしくは治療により寛解する」と定義され,増悪(喘息発作,急性喘息)に関しては「息切れ,咳,喘鳴,胸部圧迫感(胸苦しさ),あるいはこれらの複数の症状が進行性に悪化することをいう.喘息の増悪は,呼吸機能の測定により数値化でき,モニターが可能な呼気流量の減少を特徴とする.この測定値は,気流制限の重症度を示す指標として,症状の重症度より信頼性が高い」と記載されている.
一方,COPDに関してはGOLD guideline2)に「慢性閉塞性肺疾患(COPD)は予防可能・治療可能な疾患であり,個々の患者の重症度には,肺以外の併発症が関与することがある.肺症状は,完全には可逆的ではない気流制限を特徴とする.この気流制限は通常進行性で,有害な粒子やガスに対する肺の異常な炎症反応と関連している」と定義されており,増悪に関しては「COPDの自然な進行のなかで起きる現象であり,呼吸困難,咳,喀痰といった症状が日常の変動を超えて増悪したものと定義される.発症は急性で,安定期のCOPD治療薬を変更しなければならない場合もある」と記載されている.
以上より,喘息もCOPDもともに肺の慢性炎症性疾患であり,増悪は種々の原因による気道炎症の増強に起因する.特に,増悪時には臨床症状や気流閉塞の病態が類似するため,鑑別が困難な場合がある.しかし,喘息は可逆的な気流閉塞が特徴であり,COPDは不可逆的な気流閉塞を特徴とし,進行性である点が異なる.しかし,GOLD2006には「気管支拡張薬吸入後の1秒率(FEV1/FVC)と1秒量(FEV1)の測定はCOPDの診断と病期評価に推奨されているが,気流制限の可逆性〔例えば,気管支拡張薬あるいはグルココルチコステロイド投与後の1秒量の変化量(ΔFEV1)〕は,診断,喘息との鑑別診断,あるいは気管支拡張薬やグルココルチコステロイドによる長期治療への反応性の予測には推奨されていない」と記載され,COPDは治療可能な疾患であり,治療に対する反応性は個々によって異なり,気流閉塞が正常化(1秒率≧70%)しない限り,改善率のみでは喘息とは区別できないことを示唆している.
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