Japanese
English
Current Opinion
がん緩和医療
Palliative Medicine in Cancer Patients
田中 桂子
1
Keiko Tanaka
1
1がん・感染症センター都立駒込病院緩和ケア科
1Division of Palliative Care, Tokyo Metropolitan Cancer and Infectious Diseases Center Komagome Hospital
pp.525-529
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101266
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緩和医療をめぐる最近1年間の話題
[1] 緩和医療の「対象」の拡大
緩和ケアとは,「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して,疾患の早期より,身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな問題に関してきちんとした評価を行い,それが障害とならないように予防したり対処したりすることで,クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を改善すること(下線筆者)」と,2002年にWHO(世界保健機構)で定義し直された1).
緩和医療・緩和ケアはこれまで「癌に対する治療がなくなった」時期から「抗癌治療に代えて」提供されてきた歴史があるが,WHOの新しい定義では「延命を目的とした治療と共に早期に適用され,QOLを向上させるのみならず,疾患の経過そのものにもよい影響を与えうる」と緩和ケアの役割を明記している.疼痛・呼吸困難などの身体症状や,抑うつ・不安などの精神症状を緩和することが,積極的抗癌治療への意欲や治療に関する意思決定によい影響を及ぼし,その結果QOLのみならず,治療経過・生存期間に好影響を与えることが示唆されており,終末期だけでなく早期からの緩和医療の提供,すなわち緩和医療の「対象の拡大」の重要性が認識されつつある.
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