Japanese
English
特集 拡張期心不全をめぐって
左室拡張機能不全の生化学
Biochemical and Molecular Biological Bases of Diastolic Heart Failure
新井 昌史
1
Masashi Arai
1
1群馬大学大学院医学系研究科臓器病態内科学
1Department of Medicine and Biological Science, Gunma University Graduate School of Medicine
pp.257-265
発行日 2009年3月15日
Published Date 2009/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101219
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はじめに:用語と概念
近年,左室駆出率が正常に保たれているにもかかわらず,心不全を来す病態として,「拡張不全」ならびに「収縮力保持性心不全」が注目されている.「拡張不全」は「収縮不全」と対比される概念であるが,実際の病態としての「拡張不全」は左室拡張能だけの障害でなく収縮能も正常とは異なる.同様に,「収縮不全」は左室収縮能だけでなく左室拡張能も同時に障害されている.すなわち,拡張不全は拡張能だけの障害でもなければ,拡張能の障害を呈する疾患が拡張不全だけでもない.さらに「収縮力保持性心不全」は,「駆出率が軽度の低下にとどまる心不全」を意味し,これは収縮能や拡張能といった機能の違いに基づいた分類ではなく,臨床的実用性から命名された疾病分類である.したがって,「拡張機能障害」,「拡張不全」,「収縮力保持性心不全」の順に,機能の視点から臨床の視点へと捉え方が変わっていることに注意しなければならない.
本稿では,これまでに明らかにされている拡張機能障害をもたらす機序を概説するとともに,機序の点から拡張不全と収縮不全の類似点,相違点について述べることにする.
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