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特集 拡張期心不全をめぐって
左室駆出率が正常な心不全と拡張期心不全は同じか
Heart Failure with Preserved Ejection Fraction and Diastolic Heart Failure
山本 一博
1,2
Kazuhiro Yamamoto
1,2
1大阪大学臨床医工学融合研究教育センター
2大阪大学大学院医学系研究科循環器内科
1The Center for Advanced Medical Engineering and Informatics, Osaka University
pp.267-275
発行日 2009年3月15日
Published Date 2009/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101220
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はじめに
従来の心不全に対する概念は「左室収縮性の低下とそれに伴ううっ血・体液貯留」であり,左室駆出率低下と左室拡大を認めるものを指していた.しかし,この病態は,「収縮不全」,「収縮期心不全」と呼ばれ,「心不全」の一表現系にすぎず同義語ではない.
心不全症例の40~50%では左室駆出率が保持されている,あるいは軽度低下にとどまり,このような症例では左室拡大を認めないことが多く,心不全発症は左室拡張機能障害が主たる要因であることから1),「拡張不全」,「拡張期心不全」と呼ばれている.
心疾患において,収縮機能障害に先行して拡張機能障害が起こることは広く知られている.拡張期心不全症例の長期追跡データは乏しいが,これまでの報告をみると,拡張期心不全症例はその後も拡張期心不全のまま推移することが多く,拡張期心不全が収縮期心不全の前段階であるとする考え方については現段階では否定的である.
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