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貧血と心疾患をめぐる最近1年間の全般的な話題
心不全患者のなかで慢性腎臓病(CKD)と貧血は生命予後の独立した予測因子である1).2003年にSilverbergらは,心血管病とCKDと貧血は互いに悪影響を及ぼしあっており悪循環を形成していることから心腎貧血症候群(cardio-renal anemia syndrome)の概念を提唱した2).このなかで米国でのmedicareの患者を対象に2年死亡率を計算したものであるが,貧血,心不全,腎障害のいずれもない症例の2年死亡率は7.7%,貧血単独例で16.6%,心不全単独例で26.1%,腎障害単独例で16.4%であるが,重複すると死亡率は上がり貧血と心不全では34.6%,腎障害と貧血では27.3%,心不全と腎障害では38.4%,心不全,腎障害,貧血すべて合併すると45.6%に及ぶと報告している.大規模臨床試験での心不全患者における貧血の頻度は,貧血の定義にもよるが概ね15~30% 程度と考えられる.2005年のVal-Heft(Valsartan Heart Failure Trial,n=5,010)では23%であり,さらに1年間での新規貧血発症は16.9%と報告されている.また,ヘモグロビン(Hgb)で1g/dlの増加は12.6%の死亡率低下になることも報告された.継時的なHgbの増加は左室駆出率の低下と相関する3).また,アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)であるカンデサルタンを用いて収縮障害と拡張障害の心不全を比較しても貧血の合併頻度は差がないことも大規模臨床試験(CHARM)で報告された4).Silverbergらは,貧血の程度とNYHA classとは相関があることを報告している5).すなわち,NYHAI度では貧血の頻度が9.1%であるのに対し,IV度では79.1%と高率であり,それぞれのHgb値は13.7,10.9g/dlであった.2005年にはPhilippらも約3,000例の臨床試験で同様の結果を報告している6).NHYAI度でHgb14.2,IV度で12.9g/dlであった.したがって,貧血の程度は心不全の重症度を反映すると考えられる.
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