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睡眠時無呼吸症候群のCPAP以外の治療をめぐる最近1年間の話題
[1] 口腔内装具(OA)について
睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome;SAS)において,CPAP(continuous positive airway pressure)が治療のgolden standardであることは間違いないと思われる.しかし,わが国の保険制度上の問題として,CPAPの保険適用が無呼吸低呼吸指数(AHI)20/H以上であるということが挙げられる.またCPAP自体の問題としてコンプライアンスの悪さがあり,CPAPで効果が確認されているにもかかわらず脱落する症例も少なくない.その割合は文献的には60~70%ぐらいとされる1,2).そのため,従来はAHI20/H未満の症例やCPAP脱落症例に対する治療の選択肢が内科療法などに限られていた.
2004年に歯科診療報酬改定で「睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装具(oral appliance;OA)の評価」が新設された.医科診療施設などから情報診療提供料算定に基づき治療の依頼を受けた時にOAは算定可能となる.基本的にOAはAHI5.1/H以上,CPAPの脱落症例が主な適応になると思われる.構造上OAは下顎前方位型・舌維持型・軟口蓋挙上型に分類されるが,そのなかでも下顎前方位型が最も一般的である.また,下顎前方位型でも上下顎一体型と,ある程度の開口が可能で装着時の違和感が軽減される分離型があり症例により使い分けられる.OA(特に下顎前方位型)の効果は,下顎骨自体を前方位に維持して舌骨や舌根部組織を前方に移動させ,気道スペースの拡大を図るものである.また,下顎が前方に移動することにより,おとがい舌筋の呼吸性筋活動が増大し気道内陰圧による舌の引き込みを防止する.OAを使用する場合,歯牙動揺を伴う歯周病がないことや,固定に耐えうるだけの残存歯牙の数(できれば20本以上)が必要になる.また,下顎を前方に移動するために顎関節疾患がある場合も除外される.合併症としては,長期的に使用することにより歯列不正を引き起こすという報告もある3).また装着時の違和感もあり,脱落者もCPAPよりは少ないが存在する4).しかし,侵襲が少なく,それほど難しくない操作で作製することができるため,CPAP以外の治療としてOAは有用な選択肢となった.
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