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特集 メタボリックシンドロームと循環器疾患
メタボリックシンドロームと虚血性心疾患
Metabolic Syndrome and Ischemic Heart Disease
加藤 徹
1
,
野出 孝一
1
Toru Kato
1
,
Koichi Node
1
1佐賀大学医学部循環器内科
1Department of Cardiovascular Medicine, Faculty of Medicine, Saga University
pp.977-983
発行日 2007年9月15日
Published Date 2007/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100882
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メタボリックシンドロームにおける虚血性心疾患の発症率
わが国の労働省作業関連疾患総合対策研究班によって行われたメタボリックシンドロームリスクファクター数別の心血管イベント発症リスクの検討では1),リスクファクター数が3つ以上重なった群はリスクファクターを持たない群に比べ,虚血性心疾患の発症が30倍以上であった(図1).また,心血管系疾患,癌,糖尿病の既往のないフィンランド男性1,209人を平均11.6年間追跡調査した結果2),NCEP-ATP III基準(表1)で診断されたメタボリックシンドロームがあると冠動脈疾患による死亡が3.77倍であった(図2).これらの報告から,メタボリックシンドロームは虚血性心疾患の発症率を上昇させるばかりでなく,虚血性心疾患による死亡率を上昇させる可能性が高い.
また,心血管イベント,癌の既往歴がなく,登録時に糖尿病がない45歳以上の健康なアメリカ人女性14,719名を8年間追跡したところ,メタボリックシンドロームの項目数と炎症指標である高感度CRP値と相関があった.高感度CRPは虚血性心疾患をはじめとする心血管病のリスクとして注目されており,メタボリックシンドロームは,それを構成する危険因子が炎症を惹起することによって虚血性心疾患リスクを上昇させている可能性がある(図3)3).すなわち,メタボリックシンドロームのリスクファクターの重積によって,後述するアディポサイトカインなどを介して炎症反応が惹起され,虚血性心疾患のリスクを上昇する可能性がある.
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