Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
近年のコンピュータを駆使した画像診断機器の発展には目をみはるものがある.肺癌領域では,他の呼吸器疾患と同様,あるいはそれ以上にcomputed tomography(CT)の果たした役割は大きい.
high-resolution CT (HRCT)の発達により,HRCT像が腫瘍切除面の肉眼像を良好に反映できるようになった結果,小型肺腫瘤病変におけるradiological-pathological correlationの解明が進歩した.しかし,このHRCTを用いてもなお空間分解能には限界があり,より微細な構造の解析を可能とする装置の開発が望まれた結果,顕微鏡レベルに分解能を向上させた超高分解能CT(micro CT)の開発研究が進められている.
一方,連続して一定の速度で人体を移動させながら撮影する高速らせんCT (helical CT)の肺癌検診への応用により,I期肺癌を従来の胸部単純写真による検診よりもはるかに数多く発見できるという事実が明らかとなった.
また,多列検出器を用いたヘリカルCTであるmultidetector-row CT(MDCT)の登場により,さらに迅速な画像情報の収集と詳細な3次元画像情報を得ることが可能になった結果,末梢型肺癌においては陰影自体の性状と周囲既存構造の性状が肺の区域解剖に基づいて立体的に把握できるようになり,中枢型肺癌においては既存構造への浸潤やリンパ節転移の評価のみならず気管支鏡で不可視となる腫瘍末梢側気管支の情報も得られるようになった.
その反面,CT画像情報は膨大な量となり,コンピュータによる画像診断支援システム(computer aided diagnosis system:CAD system)の開発が要求された結果,検診における存在診断支援だけでなく,異常陰影の質的診断支援においてもCAD systemは威力を発揮するようになった.
更に,CTによる診断は形態学的根拠を基盤としているために自ずと診断限界があるのに対し,ブドウ糖のアナログである18F-フルオロデオキシグルコースを用いたpositron emission tomography(FDG-PET)は癌細胞の糖代謝能を測定するという生物学的根拠を基盤としており,CT診断能を凌駕するまでの存在となった.
本稿では,肺癌診療におけるこれらCTを中心とした画像診断の最新の話題につき,本誌の対象が呼吸器科医であることに留意して極めて臨床的な観点からまとめて述べることにする.ただし,紙面の都合上CAD systemの詳細やmicro CTについては述べることができなかったことを許していただきたい.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.