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Current Opinion
慢性心不全の治療戦略―各種薬剤の使用基準と使用順序をどうするか
Current Pharmacological Treatment of Chronic Heart Failure
西山 信一郎
1
Shinichiro Nishiyama
1
1虎の門病院分院内科総合診療科/循環器センター
1Toranomon Hospital, Division of General Medicine/Cardiovascular Center
pp.721-726
発行日 2003年7月1日
Published Date 2003/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100691
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慢性心不全の治療をめぐる最近1年間の話題
慢性心不全は,心筋の障害により機能が低下し,全身の組織代謝に必要な血液量を駆出できなくなった終末的状況であり,その予後は不良である.慢性心不全の治療の目的は心機能および症状の改善と生命予後の改善にあるが,近年心不全における神経体液性因子,交感神経系の役割の解明が進み,また欧米の大規模臨床試験の結果が明らかにされたことにより慢性心不全の治療はこの10年間で大きく変遷した.ジギタリスをはじめとする強心薬では延命効果は期待しえず,ACE阻害薬やβ遮断薬など心臓に保護的に作用する薬物により生命予後が改善することが明らかにされ,2000年に発表されたACC/AHAのガイドライン,2001年のヨーロッパ心臓病のガイドラインでもACE阻害薬は心不全治療の第一選択薬に位置づけられている.2001年には心不全治療薬としてのアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の有用性,重症心不全に対するβ遮断薬の有用性が報告された.2002年は薬物治療による大規模試験の報告は少なく頭打ちの状態で,むしろ両心室ペーシングなど非薬物治療の有用性に関する報告が目立った1年であった.わが国では2002年にcarvedilolが慢性心不全治療薬として認可され,またpimobendanにより心不全患者の予後を悪化することなくQOLを改善することが報告され,今後わが国において各心不全治療薬がどのように位置づけられるのか興味深い状況といえよう.
本稿では,主に2002年に発表された心不全の薬物治療に関する報告をまとめ,各種薬剤の使用基準について展望してみたい.
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