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特集 自然免疫と肺
自然免疫をめぐる最近の話題―Toll-like receptorsの病原体認識とシグナル伝達を中心に
Recent Topics in Innate Immunity:Microbial recognition and signaling of Toll-like receptors
今野 和典
1
,
三宅 健介
1
Kazunori Konno
1
,
Kensuke Miyake
1
1東京大学医科学研究所感染遺伝学分野
1Division of Infectious Genetics, Institute of Medical Science, University of Tokyo
pp.347-354
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100560
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はじめに
1908年のMechinikoffによる食細胞の発見以降,長い間,自然免疫はマクロファージ(Mφ),好中球,樹状細胞(dendritic cell:DC)などの食細胞が侵入してきた病原体を貪食し分解する非特異的な免疫反応であり,リンパ球を中心とした獲得免疫の成立までの一時しのぎと考えられていた.
自然免疫において,補体,レクチン,スカベンジャーレセプターなどは病原体と結合し,マクロファージなどによる貪食を促進する.しかし,貪食だけでは病原体排除には不十分で,貪食細胞の活性化や一酸化窒素(NO),抗微生物ペプチドや炎症性サイトカインなどの産生を誘導する防御反応の惹起が必須である.1996年に,ショウジョウバエのToll(元来,個体発生に際し腹側への分化誘導因子として発見されていた)が真菌感染を察知して感染防御反応を誘導する機能も有していることが報告され1),翌年,Tollのマウス,ヒトホモログとしてToll-like receptor(TLR)がクローニングされ,同様にヒトの免疫機構においても病原体を特異的に認識し,感染防御機構を誘導することが明らかになった2).
地球上の生物の90%は獲得免疫を持たず,自然免疫機構だけで病原体を認識し排除しており,TLRを中心とする病原体認識,防御反応誘導の発見を契機として,自然免疫機構の重要性が見直されることとなった.
本稿では,自然免疫における病原体認識,シグナル伝達機構についてこの数年で明らかにされた点についてTLRを中心に述べる.
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