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はじめに
心臓手術後のリハビリテーションは,これまでは保険適用上は開心術後リハビリテーションとして行われ,適応疾患としては冠動脈バイパス術(CABG)および弁膜症に対する弁置換術や弁形成術,そして先天性心疾患の一部が中心であった.わが国の心臓リハビリテーションの歴史から考えても,1996年に開心術後の心臓リハビリテーションの保険収載がなされてからまだわずか10年という短さである.わが国の心臓リハビリテーションは欧米に比べて約20年遅れていると言われるが,欧米人に比べて日本人の虚血性心疾患の有病率も死亡率もいずれも低いことがその理由の一つと考えられる.また,以前は小児期のリウマチ熱罹患の後遺症としての弁膜症がよくみられたが,最近では衛生状態の向上や適切な抗菌薬の使用によってリウマチ性の弁膜症も減少傾向にある.さらに,わが国は諸外国と比べてもCABGよりも冠動脈インターベンション(PCI)の割合が高く,心臓手術全体の件数が少ないわりには手術を行う施設が多く,術者当たりの件数が少ないなどの特徴があることが知られている.
さて,2006年4月より診療報酬の見直しがなされ,慢性疾患としての慢性心不全および末梢動脈疾患に加えて,急性疾患として今までの急性心筋梗塞および狭心症,開心術後に加えて大血管疾患およびその術後が追加された(表1).新たな急性疾患としては,ただし書きがあり,大動脈解離,解離性大動脈瘤および大血管術後とされている.つまり,急性大動脈解離の内科的治療後および術後,胸部または腹部大動脈瘤の術後が主なものであろう.今回の診療報酬の改定に伴い,心大血管疾患リハビリテーション料というくくりになり,2002年に発表された「心疾患における運動療法に関するガイドライン」1)に基づいて行うこと,という文言が入った.しかし,これらの新しく加わった疾患についての術後リハビリテーションについては,慢性心不全以外には記載がなく,他にも明らかな指標がないのが現状である.
本稿では比較的遅れている大血管術後の心臓リハビリテーションを中心に,われわれの施設における方法や,文献的考察などを用いて概説したい.
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