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はじめに
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(ACEI)は,これまでの多くの大規模臨床試験により,その降圧効果とは独立した“Beyond Blood Pressure Effect”を有する降圧薬として確立されている.その恩恵を享受できる病態として心不全,心筋梗塞後,糖尿病および糖尿病性腎症,腎機能障害,脳卒中後などの高リスク状態があり,これらの病態では高血圧の有無にかかわらずその予後改善効果が得られることが証明されている.
最近発表されたJNC 71)において,ACEIはその豊富なエビデンスによりこれらの病態で積極的適応となる薬剤として位置づけられている(表1)1).しかし,わが国におけるACEIの使用量は年々減少しており,一方アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の使用量が爆発的に増加している.この現象の背景には,ARBのエビデンスが徐々に集積されてきたということもあろうが,ACEIの代表的な副作用である咳がその処方をためらわせているのではないかと思われる.確かに,われわれ臨床医にとって目の前の患者のQuality of Life(QOL)を考慮することは重要なことであり,特に半永続的に内服していくことが想定される降圧薬を処方するにあたり,同じレニン・アンジオテンシン(RA)系を阻害するARBでもよいのではないかと思われるかもしれない.しかし,降圧および臓器保護作用に関してARBがACEIを凌駕したという大規模臨床試験の報告は現時点ではないということ,また国民医療費が増加しているわが国においても費用対効果分析の考え方も重要となってきているが,ARBの薬価は依然として高価であることを忘れてはならない.
本稿では,ACEIの高血圧治療における臨床的有用性について,特にACEIがその効果を発揮する病態ごとに再確認していきたい(心不全,心筋梗塞後を除く).
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