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はじめに
レニン・アンジオテンシン系(RA系)阻害薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)が日本で臨床応用されて20年以上になる.その間に,様々な基礎薬理学的研究,臨床薬理学的研究,さらには大規模臨床試験が行われ,現在では高血圧症のみならず心不全,心筋梗塞,糖尿病性腎症などの治療薬としても中心的な位置を占めている.また,米国高血圧合同委員会第7次報告(JNC-7)における合併症別の推奨降圧薬の指針においても,降圧薬のなかでACE阻害薬だけが唯一,心不全,心筋梗塞既往,CAD高リスク,糖尿病,慢性腎疾患,脳卒中二次予防の全ての合併症において推奨される降圧薬となっている(図1)1).
このように,現状では臓器保護の点でACE阻害薬が最も豊富なエビデンスを有していることは言うまでもない.一方,ACE阻害薬とは異なる薬理作用を持つRA系阻害薬であるAT1受容体ブロッカー(ARB)が,わが国で6~7年前から次々と降圧薬として臨床応用され,現在では5種類のARBが治療に使われている.ARBは,後述するようにACE阻害薬とは異なる薬理作用を持つメリットが注目されている.また,毎年ARBに関する大規模臨床試験の結果が報告されている状況にあり,現在最も話題性の多い循環器薬といっても過言ではない.
現在,このARBは日本において急速な勢いで処方が増加しつつあり,それとは対照的にACE阻害薬の処方が年々減少傾向にある.ACE阻害薬のこれまでに築かれた臓器保護のエビデンスを考慮すると,ACE阻害薬使用の減少傾向に納得のいかない専門家が多くいるのも当然である.では,なぜこのような現象が起こっているのであろうか? また,ACE阻害薬とARBをどのように使い分けるべきか? 臨床医にとって極めて関心の高いこれらの問題点について筆者が明確に答える能力はないが,本稿では,薬理学の立場からARBの急速な普及現象の根拠について筆者なりに分析してみたい.
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