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ICD・ペースメーカ患者をとりまく社会環境をめぐる最近1年間の話題
意識消失の原因疾患を有する患者と社会との関わりは,この数年で変化した.特に2001年の道路交通法改正による「免許の欠格事由」の見直しは重大である.同法改正以前には「不整脈その他に起因する意識消失発作を有する患者」に対する規定はなかったが,改正後は政令により「運転免許の取得・更新等」を制限できるようになった.具体的運用は「警察庁交通局運転免許課長通達」1)に沿うが,2002年6月1日の道路交通法施行令の基準に合致する患者には,免許が与えられないか,または6カ月を超えない範囲内で免許を保留される可能性がある.対象疾患は多岐にわたり,精神分裂病(=統合失調症),てんかん,再発性の失神,低血糖,そううつ病,重度の眠気を引き起こす睡眠障害,痴呆,その他であり,運転を希望する患者に対して医師はその判断と診断書作成を求められることとなった.そこで日本心臓ペーシング・電気生理学会では不整脈により失神する患者への対応ガイドライン策定を開始し,多くの同学会会員と日本循環器学会,日本胸部外科学会の協力の下,「不整脈に起因する失神例の運転免許取得に関する診断書作成と適性検査施行の合同検討委員会ステートメント」2)を作成した.今後は患者から運転免許取得・更新に際して診断書を求められた場合を含めて,患者指導に際し,このステートメントも参考にできることとなった.
ステートメントは「不整脈を原因とする失神」に関するもので,対象を3つに分け運用方法を定めている.すなわち,1)植込み型除細動器(ICD)植込み患者,2)ペースメーカ患者,3)その他,である.担当医は運転免許を与えてもよいと思われる患者には,「運転を控えるべきとはいえない」由の診断書を与えうるが,ステートメント作成に際して問題となったのはICD患者である.長年にわたる経験上,ペースメーカ患者は正しい手術と術後管理下では安全であろうことをわれわれは知っている.また3) その他の「不整脈が原因で失神したにもかかわらず,ICDやペースメーカを植込んでいない患者」には相応に危険と推定できる.すなわち,ICD患者だけは日本での運転の危険度に不明点が多かったのである.そこで本稿では,ステートメント作成上,参考となった,ICD患者指導に有用な論文を中心に概説したい.
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