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心房細動に対するカテーテルアブレーション治療の現状
1. 現在の治療方法と成績
カテーテルアブレーションは,経皮的に心内に挿入した電極カテーテル先端から高周波電流を流すことで不整脈の発生源または旋回路の一部を焼灼,切断する根治療法である.1回の通電による焼灼可能範囲が直径5mm程度と小さく,回路の限られた不整脈には奏効するものの,広い範囲の焼灼にはあまり適していない.心房細動は心房全体をその発生の場とする複雑な不整脈であり,根治のためには外科的なメイズ手術を代表とする心房全体に対する治療が必要であり,カテーテル治療による根治は困難と考えられてきた.ここで大きな突破口となったのが,フランスのHaïssaguerreらの提唱した肺静脈理論である1).彼らは,発作性心房細動の大多数が肺静脈起源の心房性期外収縮を引き金として発生すること(図1a)をつきとめ,その発生源(肺静脈内部)をカテーテル焼灼することで心房細動の根治が可能であることを報告した.その後の進歩はめざましく,肺静脈入口部での焼灼による肺静脈隔離術および線状焼灼法による拡大肺静脈隔離法などが開発され,治療対象も発作性のみならず慢性心房細動へと広がりつつある.
図2に現在行われている肺静脈電気的隔離術の方法を示す.治療部位は肺静脈内部ではなく肺静脈前庭部であり,肺静脈内心筋と左房心筋の電気的交通を断つことを目標とする.両者の間の交通が肺静脈入口部の比較的限られた連結部位を介してなされているため,その連結部位を正確に同定しカテーテル焼灼することで肺静脈の電気的隔離が可能である2).肺静脈は心房細動の引き金としてだけでなく,その維持にも大きな役割を果たしており,原則的に4本すべての肺静脈を左房から隔離する方法がとられる.肺静脈入口部円周上の左房肺静脈連結部位を同定する目的で開発された先端リング状のマッピングカテーテルを経心房中隔的に左房に挿入し,肺静脈前庭部に留置する.先端のリング上に10~20極の電極が配置されており,これから得られる電位情報からbreakthrough部位を同定することができる.通常1本の肺静脈に複数のbreakthroughが存在するため,各々カテーテル焼灼を行って段階的に電気的隔離を完成させる(図2).左房肺静脈間連結部位の同定には,肺静脈入口部円周上の最早期興奮部位のマッピング(最早期マッピング)以外に,ベクトルマッピング3)(電位極性反転部位のマッピング:図3a)および単極誘導電位を指標とするマッピング4)(図3b)などの方法が考案されている.図1bは隔離された肺静脈内で発生した異常興奮の発火現象を示す.隔離前にはこのような異常興奮が左房へと伝導することで心房細動の発生および維持がなされていたが,隔離後には異常興奮は左房へと伝導できず,洞調律を乱すことはない.
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