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はじめに
PIAF1),STAF2),AFFIRM3),RACE4)など最近のメガトライアルにおいて心房細動の心拍コントロール群と調律コントロール群とで予後の差がないという結果が報告されて以来,心房細動の治療が見直されつつある.しかし,これらのトライアルには自覚症状やQOLが考慮されてなかったり,対象が高齢者が多く孤立性心房細動の症例が少なかったりと問題点が多い.そして,調律コントロール群においても洞調律維持達成率は232)~63%3)と不十分で,最終的に洞調律を維持できていた群とできていなかった群とを比較すると洞調律維持達成群のほうが予後が良いとの解析結果も発表されている2).
最近,カテーテルアブレーション法が発達し,心房細動にも応用されるようになってきた.心房細動は肺静脈を含む心臓静脈系起源の心房性期外収縮により起きるという考えのもと5),肺静脈あるいは上大静脈を電気的に隔離する方法である6).その一方で,薬物療法も依然として心房細動に対する洞調律維持治療の基本を担っている.ただし,CAST7)で明らかにされたように,Naチャネル遮断薬を用いた薬物療法では伝導抑制による催不整脈作用や陰性変力作用が問題になる.一方,Kチャネル遮断薬は再分極過程を延長して不応期を延長させることでリエントリー性不整脈を抑制し,かつ収縮抑制が少ないという特徴があるので期待されたが,これまでに開発されたKチャネル遮断薬が主としてIKr(rapiddelayed rectifier)を標的としていたため,QT延長をもたらし,torsades de pointesを誘発してしまう8,9).これに対してK電流のなかでもIKur(ultrarapid delayed rectifier)は心房筋に存在し,心室筋には存在しないといわれている脱分極依存性外向きK電流であり,Kv1.5はそれを規定する蛋白である10).この電流をターゲットにすると,心室に影響を及ぼすことなく,心房性不整脈を特異的に抑制する可能性がある.
本稿ではIKur/Kv1.5を修飾する病態および薬物について総説する.
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