Japanese
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特集 循環器用薬剤の他臓器作用,非循環器用薬剤の循環器系への作用
糖尿病領域の薬剤の心血管作用
Cardiovascular Action of Anti-diabetic Agents
林 晃一
1
,
脇野 修
1
,
吉岡 恭子
1
,
猿田 享男
1
Kouichi Hayashi
1
,
Osamu Wakino
1
,
Kyouko Yoshioka
1
,
Takao Saruta
1
1慶應義塾大学医学部内科
1Department of Iuternal Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.493-501
発行日 2006年5月1日
Published Date 2006/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100205
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はじめに
本邦における食生活の欧米化に伴い,肥満ならびに2型糖尿病の発症頻度が著しく増加している.元来,日本人は肥満の程度は欧米人に比し軽度であるにもかかわらず,耐糖能が悪い傾向を示すことが知られており,糖尿病ならびに耐糖能異常・インスリン抵抗性,ひいてはメタボリック症候群に伴う血管障害が進展することが危惧されている.したがって,これらの病態が持続することにより,動脈硬化や血管内膜・中膜の肥厚などが進行し,さらには心血管事故の発症につながることが予想される.
古くより末梢組織におけるインスリン抵抗性改善作用を示す薬剤としてビグアナイド系の経口抗糖尿病薬が知られていたが,副作用としてのケトアシドーシスがその使用を抑制していた.しかしながら,近年インスリン抵抗性が主体である2型糖尿病が増加の一途をたどり,ビグアナイド系薬剤による抗インスリン抵抗性改善作用が再び脚光を浴びるようになった.さらに近年,インスリン抵抗性改善薬としてチアゾリジン誘導体化合物が合成され,糖尿病治療薬としてのインスリン抵抗性改善薬の地位が確固たるものとなった.最初に市販された誘導体であるトログリタゾンは肝障害の副作用により市場から消えることになったが,その後に市販されたピオグリタゾンは,日常診療でその有効性により頻用されるようになった.さらに,チアゾリジン誘導体にはインスリン抵抗性改善作用のみならず,血管保護作用などの多面的作用を有することが明らかになった.
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