辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論
過疎地域の地域医療
籾井 真美
1
Masami MOMII
1
1東国東地域広域国保総合病院
pp.424
発行日 1990年5月1日
Published Date 1990/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900642
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私が33年間院長を務めている病院は大分県東国東郡にある.当地は,「佛の里」といわれているところで,大分空港の完成,テクノポリスなどの地域振興策がとられているにもかかわらず,かつて6万以上あった人口が4万3,000に減少,老齢化率は21%を超え,病院には老人が溢れている.先祖伝来の土地と家を守っている独居老人が骨折などで入院すると家に帰れなくなるし,介護人が入院すれば寝たきり老人も一緒に入院させてくれということになったりする.
同居家族があるにもかかわらず,退院させたがらない例も多い.訪問看護をするからと説得して退院してもらったものの,それでも面倒をみきれない家族は,老親を郡外の施設に入院させる.郡内の施設が絶対的に不足しているからだ.馴染みのない病院に追いやられた老人の気持ちを思うと,胸が痛む.在宅介護が無理なら,せめて人生の終わりは,生活圏内の施設で面倒をみてあげたいものだ.
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