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胃食道逆流とは
胃食道逆流(gastroesophageal reflux;GER)または胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;GERD)とは,食道内酸逆流によりもたらされる病態ないし疾患である.欧米に比較してわが国ではGERDの頻度は従来低いものと考えられていたが,近年,欧米に比肩するほどの増加が注目されており,例えば古川らは内視鏡検査の結果から16.3%の頻度を報告している1).この増加現象には高齢者人口の増加や食生活の欧米化に伴う肥満などの因子のほかに,Helicobacter pyloriとの逆相関が関与している可能性が注目されている.すなわち,H.pyloriの陽性率の低下に伴い胃粘膜萎縮の頻度が低下し胃酸分泌能が保持されることが,いったん下部食道括約筋などの逆流防止機構の破綻を来したとき,GERDの発症につながるものと考えられている2).
GERDの症状
GERDでは胸やけ,呑酸などの定型的な食道逆流症状のほかに,非心臓性胸痛(non-cardiac chest pain)を代表とする様々な非定型的な食道由来の症状を呈する.また,いわゆる食道外症状として呼吸器,耳鼻科,口腔領域の症状がみられる.表1にGERDの食道外で示す疾患と症状を示す3).そのなかで呼吸器症状は咳嗽,喘鳴,呼吸困難などを示すことが知られている.実際,“esophageal cough”を示す患者のうち75%の症例では咳嗽が唯一の症状であると報告されている4).とりわけ気管支喘息との関連は古くから注目されており,すでに1世紀以上前にSir William Oslerは気管支喘息とこれらの逆流症状との関連を指摘している5).
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