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睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置治療をめぐる最近1年間の話題
今回,表記のようなテーマを与えられた.限定的ではあるが,口腔内装置(oral appliance,OA)が閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の睡眠呼吸障害と日中過眠を改善するというエビデンスがある1).エビデンスが限定的なのは,患者選択にバイアスが入り込んでいるうえに無作為化された良質で大規模な比較対照試験が行われていないことによる.一方では,わが国では2004年4月からOSASに対するOA治療が健康保険適用となった.OAには下顎を前方に移動して固定する装置と舌を前方に保持する装置(tongue retaining device,TRD)2)がある.前者はOA(135編)の他にmandibular advancement splint(47編),dental appliance(42編),mandibular advancement device(MAD,40編),oral device(32編),dental device(22編),mandibular advancement appliance(16編),prosthetic mandibular advancement(9編)などとも呼称されている(括弧内の数字は2004年8月までにOSASの治療法として各々の名称で報告され,Medlineに採用されている論文数).TRD(14編)に関しては信頼できるデータが乏しく,有効性・有用性に関する評価はできない.ここでは下顎を前方に移動して固定する装置の総称としてOAという用語を用い,OA治療をめぐる最近の報告をレビューすることにする.
1 OAをOSASの治療に適用する根拠
セファログラムの解析から明らかになったOSAS患者の頭蓋・顔面や上気道の形態異常をまとめると次のようになる3).すなわち,1)頭蓋底,上顎,下顎の各レベルでの顔面の前後径(奥行き)の減少,2)下顎骨の後退あるいは狭小化,3)舌面積,特に口腔外舌面積(舌下半分)の拡大,4)軟口蓋面積の拡大,5)下部鼻咽頭腔~中咽頭腔に及ぶ上気道径の狭小化,6)中咽頭腔の延長である.OAが有効であるのは,上記のようなOSAS患者の上気道の形態に影響する解剖学的な構造異常が装置によって矯正されるためである4).OAは下顎とともに舌を前方に牽引して固定し,後下方に押し出されていた舌を口腔内に納めて舌根部の気道を拡大する.実際にOAによって軟口蓋部分および舌根部の気道断面積の増大,軟口蓋の縮小,舌形態の変化が報告されている.さらにOAで下顎が前方へ移動するとオトガイ舌筋の呼吸性筋活動が増大し,気道内陰圧による舌の引き込みを防止するという,機能的な有効性も指摘されている5).
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