Japanese
English
増刊号 図説「胃と腸」画像診断用語集2022
病理
偽浸潤
pseudoinvasion
坂口 涼子
1
,
下田 将之
1
1東京慈恵会医科大学病理学講座
pp.728
発行日 2022年5月24日
Published Date 2022/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403202885
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
大腸腺癌はまず粘膜上皮に発生し,粘膜下層,固有筋層へと破壊性に侵入し増殖する.これを浸潤(invasion)と呼び,大腸に限らず腫瘍の良悪性を判断するうえで重要な所見である.一方,良性腫瘍である大腸腺腫が粘膜下層へと逸脱し,あたかも浸潤しているかのように見える場合があり,これは“偽浸潤(pseudoinvasion)”と称される.病理組織学的に浸潤と偽浸潤の判断を誤ると,腫瘍の良悪性や深達度の誤った評価につながり,追加治療や予後に大きな影響を及ぼしうるため,これらを正しく鑑別することは重要である.
偽浸潤はS状結腸の有茎性病変にみられることが多く(Fig.1),蠕動運動に伴う機械的な刺激によって,粘膜筋板の間隙から腫瘍腺管が粘膜下層へと逸脱したものと理解されている1)2).偽浸潤の病理組織学的特徴としては,粘膜下層に位置する腺管が粘膜固有層間質によって取り囲まれている,腺管の囊胞状拡張や出血をしばしば伴う,真の癌浸潤においてみられるdesmoplastic reactionを欠く,ヘモジデリン沈着を伴う,などが挙げられる1).
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.