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はじめに
超高齢社会への進展に加えて,新規生物学的薬剤の導入や多剤耐性菌の出現により,近年,日和見感染症の複雑化,多様化が指摘されている1).一方,HIV(human immunodeficiency virus)感染症は1990年代後半に劇的な進歩を遂げた抗HIV療法により長期生存可能な疾患となったが,本邦においては新規HIV感染者の約1/3がAIDS(acquired immuno deficiency syndrome)を発症した状態で診断されており,早期診断の立ち遅れが指摘されている1)2).また,性感染症では,梅毒患者の急激な増加が指摘され,社会問題化しつつある3).
感染症の疫学は刻々と変化するため,その診療には情報のアップデートを要する.本誌では消化管感染症に関して2018年4月号「腸管感染症—最新の話題を含めて」において小腸・大腸の感染症が特集された.本号は,それに続く「上部消化管感染症」特集号として,食道・胃・十二指腸の感染症を取り上げ,各疾患の動向ならびに診断と治療に関する最新情報を提供するものである.なお,Helicobacter感染症は除外した.
消化管感染症の確定診断には病変部からの病原微生物の検出を要する.小腸・大腸の感染症では,検体検査として糞便検査,糞便培養も汎用されるが,上部消化管の感染症の診断は,主に内視鏡下生検と生検培養に基づくため,検査中に内視鏡所見から感染症を疑い,至適部位から生検を施行する必要がある4).
一方,感染性食道炎として食道カンジダ症,単純ヘルペス(herpes simplex virus;HSV)食道炎とサイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)食道炎などがよく知られているが,混合感染を示す例などの内視鏡診断は必ずしも容易ではない5).また,H. pylori(Helicobacter pylori)以外の感染性胃炎として,胃結核,胃梅毒,CMV胃炎,胃カンジダ症などが知られているが,これらの特殊型胃炎は確定診断に至らず,原因不明の胃炎・潰瘍として遷延,難治化することが少なくない6).さらに,Whipple病,非結核性抗酸菌症やランブル鞭毛虫症などは“びまん性病変”を呈し,十二指腸病変の認識が診断契機となるが,その臨床像,内視鏡像が周知されているとは言い難い7).
本稿では,感染性食道炎とHelicobacter感染症以外の感染性胃炎,感染性十二指腸炎について,各代表的疾患の内視鏡診断を中心に,既報に基づいて概観する.
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