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消化管は経口的に摂取された食物を消化吸収するための管腔臓器であり,その粘膜側は常に細菌,ウイルス,原虫,寄生虫などの病原微生物にさらされている.そして,生体側の感染防御機構と侵入微生物の病原性の強さのバランスが崩れると感染が成立する.これまで本邦では,衛生状態の改善,予防医学の普及,抗菌薬の開発・普及などによって多くの消化管感染症の克服に成功してきた.しかし,近年,国際化による新しい輸入感染症の増加,保冷技術の過信やペットブームを反映した感染性腸炎の増加,自然食品嗜好による寄生虫感染症の再興などが問題となっている.さらに移植医療やヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus; HIV)感染症などの免疫不全状態における日和見感染症,抗菌薬の投与下に発症するメチシリン耐性ブドウ球菌(methicillinresistant Staphylococcus aureus; MRSA)腸炎などの消化管感染症,同性愛者に好発する性行為感染症も増加している.また,Crohn病や潰瘍性大腸炎などの特発性炎症性腸疾患の増加に伴い,種々の感染性腸炎が鑑別診断上問題となることも多い.このような背景から,本増刊号は企画された.
これまでに,本誌主題として消化管感染症が取り上げられたのは,12巻11号「腸結核(1)―小腸を主として」,12巻12号「腸結核(2)―大腸を主として」,13巻9号「腸結核(3)―疑診例を中心に」,18巻4号「急性腸炎(2)―主として感染性腸炎」,22巻7号「腸結核と癌」,30巻4号「腸結核」,31巻8号「Helicobacter Pyloriと胃リンパ腫」,32巻7号「感染性腸炎(腸結核は除く)」の8回であるが,うち5回は腸結核に関するものであった.そこで本号では,食中毒や腸結核など日常臨床において遭遇する機会の多い代表的消化管感染症のみならず,比較的まれな消化管感染症も広く取り上げ,その画像診断を中心に,診断手順,鑑別診断,治療法などについて,最近の知見を含めて解説していただいた.
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