増刊号 消化管疾患の分類2019—使い方,使われ方
序文
松本 主之
1
1岩手医科大学医学部内科学講座消化器内科消化管分野
pp.567
発行日 2019年5月24日
Published Date 2019/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403201638
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分類学は生物学の中で最も歴史のある分野であり,“生物を形態・生理などの関連や系統的なつながりに基づいて整理し,各種間の相互関係を研究する学問分野”と定義されている.この定義における“生物”を“疾病”に置き換えれば,臨床医学における“診断学”とほぼ同義となると思われる.臨床医学ではコンセンサスや診療ガイドラインに準拠した診療が必須であり,その根源にあるのが疾病の分類と言える.そして,正確かつ完璧な疾病分類法が確立されれば,その分類はAI技術を導入することにより客観的な診断に直結するようになる.すなわち,われわれは適切な分類に準拠することで,初めて正しい診断を下せることになる.
自然科学における“伝統的分類学の祖”は,Carl von Linnéである.Linnéが活躍した18世紀の博物学は植物,生物,鉱物で構成されていたが,彼はいずれの領域においても合理的かつ常識的な分類学を確立したことで知られる.中でもLinnéが最も得意とした植物の分類は,色・形状などの主観的な特徴ではなく“おしべの数”といった客観的な“所見”に着目した点と,二名法という簡潔な階層化命名法を用いた点で独創的であり,現在の自然科学に引き継がれている.さらにLinnéが高く評価されるのは,彼が詳細な観察に基づいて“経験的”に重要な所見を拾い上げ,その所見に着目した分類の提唱と体系化に尽力した点である.
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