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皮膚(外胚葉由来)と消化管(内胚葉由来)は,生体にとって外界に接しているという点で共通しているが,表面積は消化管が皮膚の100倍以上とされている.古くから皮膚は内臓の変化を映す鏡であると表現されてきた.“デルマドローム(dermadrome)”という言葉は米国のKurt Wienerの造語である1).文字通りには“皮膚徴候”であるが,全身疾患と関連して現れる皮膚病変を意味し,皮膚病変を手がかりとして全身性疾患や内臓に潜在する病変を診断することを意図したものである.Wienerは“dermadrome”をさらに“specific dermadrome”と“non-specific dermadrome”に分類した.前者は他臓器の病変を直接反映する皮膚病変であり,癌の皮膚転移,白血病の皮膚浸潤,皮膚結核が含まれる.後者は間接的に反映する反応性皮膚病変であり,瘙痒,発汗,紅斑,色素沈着,多毛,アレルギー性炎症,角化などである.この概念は網羅性をもたせようとしたためにかえって意味が薄れてしまったようで,欧米では死語となって久しい.しかし,語感が日本人好みであったためか,本邦でデルマドロームという言葉が主に内臓疾患の存在を疑う皮膚徴候を意味する言葉としてなお生き残っている.三橋2)はデルマドロームを直接デルマドロームと間接デルマドロームに分類し,前者は内臓病変が皮膚に直接波及して生じる病変(癌の転移など),後者は直接の因果関係がみられないもの(腫瘍随伴症候群など)と定義している.
実際,消化管と皮膚の両方に病変がみられる場合にはさまざまな状況が考えられる.消化管病変と皮膚病変の併存に関しては既に井上3)が分類を試みており,①消化器と皮膚を選択的に侵す群,②系統的疾患の部分症として消化器と皮膚を侵す群,③皮膚病変が原因で二次的に消化管病変を生ずる群,④消化管病変が原因で二次的に皮膚病変を生ずる群の4群に分けている.しかし,これらに該当しない状況が存在するため場合分けについて再考してみた.
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