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「見る」の周辺 序
内視鏡医にかぎらずすべての医師がいやすべての人間が必ず分かっているべきと確信する「見る」ことに関して書いてきました.書くことは兼好法師が喝破した如く,膨れた肚をスカッとさせることです.それと同時に腹ならぬ頭に溜っていたよしなしごとを外へ追い出し頭をからっぽにすることでもあります.空になってサッパリするかというとそうではなく,どこかからその空所に何かが入り込んできて埋めて行きます.埋めるものは理の当然として前にあったものより深いところから湧いてくる内容のことがあります.一般論としても謎は解決されたら終わりということではなく必ず新しい謎を呼び出すものです.空いたところへ新しいものが入るということを繰り返しついに誰も届かなかったところへたどり着く.これはあらゆる知的営為に付随します.また,下らないことを書いてしまったということは活字にならなければ気付かないものです.そういうわけで発表の場を与えて下さった「胃と腸」に感謝いたします.日本で最も知的レベルの高い集団である「胃と腸」の読者に読んでいただくのは光栄であるのと同時に,責任を痛感いたします.
見るに関しても終わることなく想が湧くようになり,続けさせていただいています.短い限られた紙面ですので,論理の飛躍があって読みづらいかもしれません.お許しください.若(くなくてもよ)い読者にお勧めしたいのは,なにかが,必ずしも学問上のことでなくても,思い浮かんだらメモに残しあとで文章にして解決してゆくことです.文にすると,その人にとっての最終地点まで届くものです.メモの大部分は真の智と関係のない博学と同じで,下らない鉄屑であったと判明するのですが稀に金鉱につながる砂金もあるものです.鉄は捨て,金は育てて金鉱にまで至れます.
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