私の一冊
「III型早期胃癌の診断に迫る─潰瘍の良・悪性の鑑別」26巻9号(1991年)
二村 聡
1
1福岡大学医学部病理学講座
pp.1819
発行日 2013年11月25日
Published Date 2013/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403114004
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本誌の数ある既刊から“私の一冊(ザ・ベスト)”を挙げることに,病理医の小生は,少し困難を感じます.なぜなら,すでに4冊あるからです.そして,既刊をすべて読破していないからです.それでも,1冊だけ挙げよと編集部に詰め寄られると,小生は第26巻9号の「III型早期胃癌の診断に迫る─潰瘍の良・悪性の鑑別」(1991年)を挙げます.あらためて述べるまでもなく,副題の胃潰瘍の良・悪性の鑑別は,消化管診療従事者にとって普遍的な課題です.詳細は,岡 幸紀氏の序説を参照してください.
以下に,私の一冊として選出した理由を述べます.診断に携わっている病理医の多くは,切除標本の肉眼所見を正確を適切な用語を使って,正しく表現することは容易ではありません.これは,病理医に記述することの重要性を理解しています.ところが,肉眼所見になって最初にぶつかる大きな壁です.肉眼観察によって得られた所見を虚心坦懐に記述することの難しさと深遠さに直面し,危機感すら感じた小生は,勤務先の消化管外科医の推薦で本誌を定期購読し,隅々まで本気で読むようになりました(当初は内容と写真を理解するのが精一杯で,読了に相当の時間を割きました).新刊とともに,一人静かに医学図書館で既刊も毎月1冊読了することを自らに課していた2000年の春先に,前述の号に出会いました.
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