特集 図説 胃と腸用語集2012
疾患〔腸〕
Lynch症候群,遺伝性非ポリポーシス大腸癌(Lynch syndrome,hereditary nonpolyposis colorectal cancer;HNPCC)
松本 主之
1
1九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
キーワード:
マイクロサテライト不安定性
,
ミスマッチ修復遺伝子
Keyword:
マイクロサテライト不安定性
,
ミスマッチ修復遺伝子
pp.767
発行日 2012年5月24日
Published Date 2012/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113347
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大腸腺腫症を伴わない遺伝性大腸癌であり,家系内に大腸癌のみならず,全身諸臓器の悪性腫瘍が発生する疾患である.Lynchら1)の2家系の報告が最初の記載で,以降家系の集積と遺伝子解析が進み,ミスマッチ修復遺伝子(mismatch repair;MMR)の変異に起因する常染色体優性の遺伝性疾患であることが判明した.本症の原因MMRとして第3番染色体のMLH1,第2番染色体のMSH2とMSH6,および第7番染色体のPMS2がある.
本症の歴史は約50年にすぎないが,その間に疾患概念や名称に変遷がみられている.Lynchら1)の報告以降,家系内に大腸癌のみ集積するLynch症候群Iと大腸癌以外の悪性腫瘍も集積するLynch症候群IIに大別され,これらを区別しない場合は遺伝性非ポリポーシス大腸癌(hereditary nonpolyposis colorectal cancer;HNPCC)と呼ばれていた.1990年にはHNPCCとして確からしい家系を集積するための基準が提唱されたものの,1993年以降原因遺伝子が次々に同定されるに至り,同基準と遺伝子診断に乖離があることが判明した.そこで,1998年に改訂基準(アムステルダム基準II)が提唱された(Table 1)2).大腸以外の多彩な悪性腫瘍が本症の特徴のひとつであることから,現時点ではHNPCCを避け,Lynch症候群の名称を用いることが多い.
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