私の一冊
「炎症性腸疾患の鑑別診断(2)─大腸病変を中心に」25巻6号(1990年)
斉藤 裕輔
1
1市立旭川病院消化器病センター
pp.585
発行日 2012年4月25日
Published Date 2012/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113166
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小生がぜひ,若手の先生方に手にとってほしい一冊は,25巻6号の「炎症性腸疾患の鑑別診断(2)─大腸病変を中心に」(1990年5月発行)である.この一冊が完全に先生方の頭の中に入れば大腸の炎症性疾患で鑑別困難,不能な疾患は激減し,正しい治療法の選択に役立ち,先生方は名医と呼ばれることを確信する.特に,渡辺英伸,味岡洋一,太田玉紀,他.炎症性腸疾患の病理学的鑑別診断─大腸病変を中心に.胃と腸25 : 659-682, 1990.は小生の画像形態診断学鑑別診断のバイブル的論文であり,本論文は消化器疾患に携わるすべての医師に読んでいただきたい論文である.さらに,消化器画像診断に興味がある消化器医は本論文を読むのみではなく,内容のすべてを頭の中にたたき込んでいただきたい.
腫瘍の診断においては,(NBI)拡大内視鏡の登場により病理組織の肉眼像から顕微鏡像が診断のゴールとなりつつもあるが,炎症性腸疾患においてはわれわれ臨床医は病理肉眼像を形態診断学のゴールとして,X線造影検査や内視鏡検査を行い,読影している.本論文では,極めて多岐にわたる広義の炎症性腸疾患において,われわれのゴールである病理標本のマクロ像を系統立てて理路整然と完璧に分類されている.われわれ臨床医の画像診断のゴールが病理の肉眼像であるから,この分類をそのまま,X線造影検査や内視鏡検査に移行することが可能である.本論文の内容を頭にたたき込むことで,実際に臨床画像の異常所見を分析する際に「この所見が示現されているのだから,この疾患とこの疾患は絶対に違う」と,回り道することなく,最短距離で診断にたどり着くことが可能となる.
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