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Ursodeoxycholic acid treatment of bile refiux gastritis: Stefaniwsky, AB, et al (Gastroenterology 189: 1000-1004, 1985)
胃亜全摘後に嘔気・胆汁嘔吐を伴う頑固な心窩部痛を生ずることがあり,逆流する胆汁酸の残胃への刺激によると考えられている.UDCAの投与により胃内に逆流する胆汁の組成を変えることにより心窩部痛を軽減できるか試みた.胃手術後に心窩部痛,嘔気,嘔吐を訴える12名(Billroth Ⅰ法1,Ⅱ法11,31~68歳,全員男性)を対象としてUDCA投与の効果を検討した.全例内視鏡で胆汁逆流による胃炎を認め,制酸剤,タガメット,コレスチラミンなどを投与されていたが症状は改善していない.5名(うち1名脱落)にはplacebo4週投与ののちUDCA1,000mg/日を4週間,7名にはその逆の順で投与し,症状なし0点,強い痛み5点,嘔気・嘔吐各1点として症状をO~7点scoreで記録した.12名の治療前の平均scoreは5.4±Llであった,placeboを先に投与した群では4週後のscoreに有意の変化はなかったが,UDCAに切り換えると4週後には2.3±3.2と有意(P<0.05)に低下した.UDCAを先に投与した群では4週後にはL9±2.5と有意(ρ<0.01)に低下した.placeboに切り換えて4週後には3.1±2.3に上昇しUDCA投与前との有意差はなくなったものの,引き続き低値であった.UDCA投与前の胃内胆汁酸はコール酸36%,デオキシコール酸22%,UDCAは1%であったが,UDCA投与後には胃内胆汁酸の43±15%がUDCAとなり,コール酸,デオキシコール酸の比率は有意に低下した.
胃切除後には二次胆汁酸であるデオキシコール酸,リトコール酸の比率が増加していることが知られている.UDCAを投与すると肝でのコール酸合成が低下し,またUDCAの7β水酸基は細菌による脱水酸化を受けにくいため,リトコール酸濃度も低下し,これにより症状が軽減すると考えられる.UDCA先行投与群でPlaceboに切り換えた後も症状があまり強くなかったのは,投与後2週間は腸肝循環中にUDCAが残存するためかもしれない.
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