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John A. R. Smith著のComplications of surgery in general(Baillière Tindall,1984)が防衛医大玉熊正悦教授により監訳され,医学書院より「一般外科医のための手術合併症管理の実際」として発刊された.監訳者序の中で玉熊教授が述べているように,天下の名医といえども術後合併症はゼロではなく,術前の綿密な準備,慎重かつ熟練した手術手技,適切な術後管理によりこれを皆無にすることこそ永年の外科医の夢である.特に最近では高齢者や糖尿病,高血圧,肝硬変症などの併存病変を有する症例に対しても積極的にmajor surgeryが行われるようになっており,術後合併症の予防や対策は極めて重要な課題である.本書はJohn A. R. Smithの編集になる術後合併症シリーズ,すなわち心肺外科,消化器外科,胆道・膵外科,整形外科,産婦人科,泌尿器科,頭頸部外科,小児外科など外科系各専門分科別にそれぞれ術後合併症をまとめた17巻のシリーズの冒頭を飾る第1巻として,外科系各科の手術に共通した合併症とその対策を取り上げ,術後合併症総論としてまとめられたものであって,手術創の合併症に始まり,感染性合併症,静脈血栓塞栓症,出血性合併症,循環器系合併症,呼吸器系合併症,泌尿生殖器系合併症,消化器系合併症のほか,最近注目を集めている栄養学的問題や老人および小児における問題,更に医薬品による合併症や蘇生法に関連した合併症や問題点も取り上げており,全13章をもって構成されている.これらが玉熊教授を中心とした防衛医大,香川医大および東大の経験豊かな4人の翻訳陣により,平易な,かつ理解しやすい文体で翻訳されており,しかもわかりやすい沢山の図はすべて原著のまま収録され平易な解説がつけられている.更に巻末には薬剤一覧表として原著に出てくる薬品名に相当する本邦の代表的な薬品名および製薬会社名を付けて読者の便利に供しており,実地臨床にすぐに役立つように配慮されている.また各章毎に「今後に残された問題点」を付記し,読者に研究の意慾をもたせるように配慮されているのも本書の特徴の1つと言えよう.本書によって術前術後の評価や管理,手術準備や手術操作の要点を十分に認識し,術後合併症の予防やその早期発見と対策に努めることにより,安全な手術の遂行と手術成績の向上が期待されるわけであって,卒後外科系各科を専攻している若手医師や中堅スタッフの必読,必携の書と言うことができる.
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