Japanese
English
今月の主題 胃のDieulafoy潰瘍
序説
Dieulafoy潰瘍の概念と病態をめぐって
Introduction
並木 正義
1
Masayoshi Namiki
1
1旭川医科大学医学部第3内科
pp.1109-1112
発行日 1987年10月25日
Published Date 1987/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112946
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上部消化管出血に対する緊急内視鏡検査が普及するにつれて,最近,わが国においてもDieulafoy潰瘍についての関心と注意が高まってきた.その報告例数も地方会の抄録を含めると200例を越えている.しかし,それが本来のDieulafoy潰瘍に当てはまるものであるかどうかは,何とも言えない.それはDieulafoy潰瘍の概念そのものが今なお明確でなく,Dieulafoy潰瘍類似の症例が,かなり含まれている可能性が考えられるからである.
ある疾患の概念を知るには,まず,その原典に目をとおす必要がある.Dieulafoy潰瘍の原典1)は1898年のBulletin de l'Acadèmie Mèdicineの39巻49~84頁に“Exulceratio simplex”と題し,副題も付いて掲載されている.これは原著論文というよりも,講演内容の記録を載せたものである.この35頁に及ぶいささか長たらしい論文のコピーを入手することができた.ところが幸いなことに島津久明2)教授(現鹿児島大学医学部第1外科)が東大第1外科に在ったとき,雑誌「臨床外科」の“原典を繙く”という欄で,Dieulafoy潰瘍について6回にわたりその翻訳を連載し,7回目には翻訳者の見解をも付け加えている.これは大助かりであった.この虎の巻と原典を見比べながら,学生時代の浅いフランス語の力を振りしぼって,ともかく全文に目をとおした.これは序説を書くものの,せめてもの責任と思ったからである.それに原典を読むということは,時間はかかるが,その間にいろいろ思いめぐらすことができ,それがまた思索を深めるのに役立つ.
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