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近年わが国で開発された消化管ファイバースコープの進歩は目ざましく,最近はさらに未踏の地とされていた小腸全域にわたる内視鏡検査も開拓されはじめるに至った.即ち十二指腸ファイバースコープが幽門輪を通り十二指腸空腸曲(Treitz靱帯部)という関門,また大腸ファイバースコープが逆行性に回盲弁(Bauhin弁)という関門をそれぞれ突破し,空腸・回腸への内視鏡挿入に成功すると,いち早く小腸専用のファイバースコープが未完成ながら開発された.そして著者らは経口的小腸ファイバースコープ挿入と経肛門的大腸ファイバースコープ挿入とにより,同一腸管内でのスコープのドッキング1)2)3)に世界ではじめて成功し(1971年3月29日)全腸管にわたる内視鏡診断の一つの可能性を立証した.しかし小腸は非常に長い,細い,屈曲に富んだ管腔臓器で,しかも腹腔内を上下左右に蛇行,重畳し,また口からも肛門からも到達し難い部位にあるため,小腸全域にわたる内視鏡検査法はきわめて至難の技といわねばならない.このため小腸の解剖学的特徴に適合した小腸鏡の完成にも幾多の難問がたちはだかっているといえよう.一方,これら小腸ファイバースコープ挿入法にしても,技術上想像されなかった難問に直面し,第14回日本内視鏡学会総会シンポジウム「小腸(空腸・回腸)の内視鏡検査」においても,幾多の問題点が提起されたが,なお小腸内視鏡検査法は黎明期であるという印象であった.著者はこのシンポジウムで腸ひもを利用したRopeway式小腸ファイバースコープ挿入法について主として報告したが,この方法によりはじめて全腸管の直視下観察,直視下生検に成功し,新しい腸診断法の1つとして登場し,腸の形態的,機能的解明に役立つ検査法と考えている.そこで本論文のねらいはRopeway式小腸内視鏡診断の方法論に的をしぼり述べてみたい.
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