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書評「レ線,内視鏡を自由に駆使」
岡部 治弥
1
1北里大学内科
pp.1168
発行日 1971年8月25日
Published Date 1971/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111626
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胃X線診断学は凹凸の相対的な高さの差をバリウム陰影の濃度の差で診断する学問である.胃内視鏡診断学は形態力もさりながら,それよりもその表面における色彩の変化によって診断をする学問である.対象は同じく胃疾患であるが診断の手技,性格は全く異質のものである.したがって元来両者は比較すべきものではなく,お互いに相おぎないあうべき診断法である.どちらか1つに習熟したならばあとは,全く知らなくてよいというものではない.胃の診断学に習熟せんとするものは,たとえ,その技術を一方しか身につけることができないにしても,他方のフィルムについて深い読影能を身につけるべきで,両診断技術を自由に駆使できればこれに越したことはない.胃カメラの開発以来,すでに10数年を経,まさに燎原の火のごとき勢で普及が初まってからでももう10年近い.その間にファイバースコープの導入,さらに相次ぐ改良によって胃内視鏡診断学は目覚ましい進歩をとげた.一方,期をほとんど同じくして,X線機械の進歩,とくに回転陽極の普及と焦点の微小化は,白壁教授らによる二重造影法の開発と相侯って,現在では十数年前には全く想像もできなかった程の微細所見や微小病変のX線診断が可能となってきた.しかし,かかる診断学の進歩は器具の発明改良とともに極めて安易に進歩したのでは決してない.日々これにたずさわる研究家のたゆまざる努力と協力によって日進月歩してきたものである.
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