一頁講座
早期胃癌の肉眼診断 私のメモから―(その6)いわゆる潰瘍癌の深達度診断
佐野 量造
1
1国立がんセンター病理部
pp.342
発行日 1971年3月25日
Published Date 1971/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111514
- 有料閲覧
- 文献概要
1.早期胃癌の深達度診断はどの程度まで可能か―smの癌で深達度が判かるのは50%程度―
smに浸潤している早期癌といっても,組織学的に調べるとピンからキリまであります.顕微鏡でやっとsmの浸潤が認められる程度のものから,これが早期癌かと思われる程に広くsmに浸潤しているものまでその程度は全く多様です.以上のような理由で肉眼的にmとsmの癌を区別するのにはおのずから制約があります.いま,潰瘍を伴う型の癌のsmに浸潤している程度を+(ミクロでsmの浸潤が判かる程度),++(潰瘍縁の1部にある程度の拡がりを有しているもの),+++(潰瘍の周囲にかなり広く浸潤しているもの)の3種に分けて調べると,70例では+21%,++48%,+++31%の割合になります.
+の程度ではsmの肉眼診断はまず不可能で,mの癌と区別がつきません.+++のものは診断可能.++のものは診断できるものと,できないものが半々程度です.こうしてみるとsmの肉眼診断可能例は50%程度ではないかと思います.
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.