一頁講座
早期胃癌の肉眼診断 私のメモから―(その3)Ⅱc型胃癌のつづき
佐野 量造
1
1国立がんセンター病理部
pp.1638
発行日 1970年12月25日
Published Date 1970/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111213
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1.Ⅱcと萎縮性胃炎の違いⅡcの範囲は全周性に追跡できること一
“癌は一つの領域をつくっている”これはごく常識的なことなのですが,案外このことはⅡcと良性の粘膜萎縮との鑑別点として気づかれていないようです.一つの潰瘍に集中する数本の粘膜ひだがあるとします.その1本に“やせ”を見出したときに隣のレリーフの“やせ”,次の“やせ”へと順次にこの変化を追ってゆきますとⅡcの全周が連続性に追跡することができます.私達はこれを「Ⅱcの全周性変化」とよんでいます.これに反して,良性の萎縮性胃炎ではときに1本のレリーフにⅡc似た“やせ”または中絶の変化をみることがありますが,この変化は2~3本のレリーフの“やせ”につながっても,その次のレリーフには“やせ”がなく,円滑に良性の粘膜ひだの性状を示して潰瘍縁に終ります.つまりⅡcに類似した粘膜ひだのみせかけの“やせ”は非連続性で全周性にやせの範囲を追跡することはできません.このようなⅡcに類似した部分的な萎縮性胃炎の“やせ”はしばしば若い人または粘膜萎縮の少ない人の胃角部附近の潰瘍にみられます.
次に,それでは癌が潰瘍の片側性のみに存在し,2~3本のレリーフに限局しているような例ではどう判断するかという問題が当然,生じてきます.この場合もⅡcの範囲は潰瘍縁を含めての全周性という意味で理解できます.
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