特集 胃生検特集
巻頭言
特集「胃生検」によせて
村上 忠重
1
1順天堂大学医学部第1外科
pp.796
発行日 1970年6月30日
Published Date 1970/6/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111352
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胃病変の生検が急速に発達して,胃疾患に関する正確な診断がたちどころに得られるようになったことは,日常この方面に携わるものにとってこんなに有難いことはない.いなそれは診療に従事するもののみの喜びではなく,胃腸疾患に悩む人の多い日本人全体の幸福につながるというべきであろう.もち論,その直接の判定は胃粘膜に見出された病変が癌か,癌でないかという点にしぼられるであろう.さらに癌でない場合には,手術の恐怖から解放される潰瘍患者も多かろうし,またこれは冗談に類するが,ポリープの場合だと逆に切除してもらえなくて,年に数回の割りで長年月にわたって生検をくり返される患者もでてくることになろう.
しかし考えてみると,このようにして胃の疾患の確診が生まのままで得られるとなると,その恩恵はもっと大きなものがある.胃が無病と診断されれば,他の上腹部疾患,十二指腸,肝,胆,膵,などに原因があるであろうと推測されるようになるからである.最近膵疾患の研究が盛んになったが,その理由のひとつは胃疾患が完全に除外できるようになったためとも思われる.
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