胃と腸ノート
蛋白漏出を来すびらん性胃炎
多田 正弘
1
,
柳井 秀雄
1
,
苅田 幹夫
1
,
竹本 忠良
1
1山口大学第1内科
pp.594
発行日 1985年6月25日
Published Date 1985/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109869
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蛋白漏出性胃腸症は,単一疾患ではなく90近くもの疾患を総合した症候群である.Waldmann1)はその成因を,①胃腸のリンパ管異常によるリンパ液の漏出,②胃腸の炎症,潰瘍面からの血清蛋白の漏出,③機序不明の3つに分類している.この胃腸の炎症,潰瘍面よりの蛋白の漏出を来すものの1つとして,びらん性胃炎が挙げられている.われわれは日常の内視鏡検査において,びらん性胃炎を数多くみているわけであるが,蛋白漏出性胃腸症の1つとして本症をみていることは少ない.
近藤ら2)は蛋白漏出を来すびらん性胃炎およびMénétrier病において,粘膜の局所線溶が亢進していることを明らかにし,抗プラスミン療法が有効であると報告している.しかし,こういった薬物療法だけでは無効な症例があることも事実である.最近,われわれは3例の蛋白漏出を来すびらん性胃炎を経験したが,2例は抗プラスミン療法では無効であった.以前は,こういう症例はびらん性胃炎といえども手術しか治療法はなかった.
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