Japanese
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今月の主題 胃診断学20年の歩みと展望―良性疾患を中心として
序説
胃診断学20年の歩みと展望―病理学の立場より良性疾患を中心に
Introduction
望月 孝規
Takanori Mochizuki
pp.127-128
発行日 1985年2月25日
Published Date 1985/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109684
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- Abstract 文献概要
胃の潰瘍性あるいは隆起性病変の中には,早期胃癌や進行胃癌が含まれている.癌としての診断を,臨床的あるいは病理形態学的に下す場合には,これらの病変の良性と悪性を鑑別しなければならず,そのための技術や理論が次第に系統づけられてきたのが,現在の早期胃癌診断学である.一方では,良性の病変,なかんずく胃潰瘍および良性胃隆起性病変の成り立ちや経過についても,検討が進められてきた.本号では,悪性腫瘍との鑑別のみならず,これらの病変の診断の問題点が論じられるはずである.
胃潰瘍は,単に胃壁に潰瘍が生じるという現象ではなく,胃に隣接する十二指腸を除く消化管の他の部位に生じる潰瘍とは異なって,特有な発生要因を有し,それに由来する特有な形態あるいは組織像を示す病変である.また,潰瘍性大腸炎やCrohn病などの疾患と同じく,人間という個体の調節の変化が発生の要因の1つと考えられる,全身的疾患である.胃潰瘍の直接の要因としては,胃液の自家消化作用であり,この考え方を明らかにしたBüchnerは,胃に食物がないときに胃液の分泌が起こる状態(Leersekretion)を重視している.最近,栄養価に富む,量の少ない飼料で育てられている豚に,高率に胃潰瘍が発生し,また2回にわたる世界大戦の後のある期間に,戦災を受けた国々の人々の中に,胃潰瘍が他の時点に比べて高率に発生したことは,彼の考え方を裏付ける事実と言えよう.
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