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膵癌早期発見のスクリーニングにアミラーゼ値の上昇をチェックし,できるかぎりERCPで膵内の異常の有無を調べることが有効であることを述べました.これは,膵癌の主膵管狭窄による二次的膵炎をチェックすることの重要性を示していますが,アミラーゼ値のみでなく,更に膵癌早期発見のきっかけが別の面から見出されてきました.それも膵の専門家が試みている特別な方法ではなく,日常最も多く用いられている胃X線ならびに内視鏡検査によるものであったことは,アミラーゼ値と同様われわれも思いがけなかったことでした.
膵と最も関係の深い臓器には,十二指腸と共に胃があることはだれでも知っていますが,膵の異常が胃にどのような変化を及ぼすかを知れば,逆に胃の変化から膵をチェックすることができます.胃と膵との重なりから図のごとく,A,B,Cに膵による胃の変化,特に胃外性圧排像が認められ,特にAの部位は従来から膵による圧排像としてよく知られています.このA部の胃外性圧排像が,特に,膵体部の癌には認められていますが,1978年にアミラーゼ高値例にERCPで早期膵癌を発見して以来,アミラーゼ値をスクリーニングとしてERCPで膵をチェックして,1年後に,ようやくアミラーゼ高値例に膵頭部主膵管の1cmの狭窄例をERCPで発見し切除しましたが,直径3cmの膵内に限局した腺癌で,膵と十二指腸との間にリンパ節転移をみた症例を経験しました.術後に胃X線所見を振り返ってみますと,胃体中部小彎(A部)に胃外性圧排像を認めました.病巣が膵頭部にありながら,胃体中部小彎に胃外性圧排像が認められたのは,一見両者が離れているので,関連がないように見えますが,実は両者間に密接な関連があります.膵頭部の癌による主膵管狭窄で,膵体尾部の主膵管の著明なびまん性拡張と共に,膵体尾部の膵実質の萎縮,それに伴う線維症の増生を来し,この主膵管拡張と膵の線維症,すなわち膵癌による二次的膵炎が胃体部小彎―後壁の胃外性圧排像に対応していることを知りました.
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