一頁講座
噴門部の内視鏡診断―(Ⅱ)良性病変の観察
小林 世美
1
1愛知がんセンター第1内科
pp.1012
発行日 1972年8月25日
Published Date 1972/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109169
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噴門部病変の内視鏡所見について述べる.
1)食道炎.胃液,胆汁,膵液等の逆流による逆流性食道炎(Reflux esophagitis)が,噴門部殊に食道下部によくみられる.十二指腸潰瘍の患者に,胸やけを主訴とするものが多いが,食道鏡検査をやると,30~80%に食道炎を認めたときの報告がある.胃切除後は,胃十二指腸,胃空腸吻合,または食道空腸吻合の吻合部を通じて,膵液,胆汁の逆流がおこり,食道下部に炎症をおこし,Alkali esophagitisといわれる.所見は,軽度の場合発赤が認められる.食道粘膜は,胃粘膜に比べて蒼白で,毛細血管の透見像が著明で,胃粘膜との境界がよく分るが,発赤がおこると,これらの所見が不明瞭になる.炎症が強くなると,びらん状を呈し,出血のみられることがある.炎症が慢性化すると,固有層以下に線維化がおこり,噴門部の開口不全や非対称性開口を示し,潰瘍性変化を伴っていると,悪性疾患との鑑別が問題になる.
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