一頁講座
胃噴門部の内視鏡診断―(1)観察法
小林 世美
1
1愛知県がんセンター第1内科
pp.623
発行日 1972年5月25日
Published Date 1972/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109113
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1.食道ファイバースコープによる胃噴門部の観察
胃噴門部とは胃の近位端,食道,胃粘膜境界部に接する部分を呼称する.この部位を観察するに,通常食道ファイバースコープが用いられる.食道ファイバースコープを食道に挿入し,約30cmの位置に達すると,管状に見える食道の下端に,放射状に閉鎖している噴門部が見える,更に進むと,約40cmの位置に,食道・胃粘膜境界部を見,殆んど同時に噴門部が開いて,胃内腔が前方に見える.この位置は,身長の如何に拘ず,38~42cmの深さにあるのが正常で,身長の高い米国人でも殆んどこの範囲内にあり,日本人との差は認められない.食道・胃粘膜境界部は,横隔膜裂孔(Diaphragmatic hiatusまたはEsophageal hiatus)に近接していて,胃内へ開口する少し手前に見える場合と,開口した瞬間に見える場合がある.その境界部は,通常明瞭である.何故なら食道粘膜は白っぽく,主として縦走する毛細血管が容易に認められるに反し,胃噴門部の粘膜は橙赤色で,その色調の差異が境界部を明瞭に映しだす.境界線は,通常鋸歯状を呈している.検査時この粘膜境界部の位置を,門歯からの距離で記載する.正常者では,境界部の生理的狭窄がHiatusにほぼ一致しているが,この位置が異常に異なると,粘膜境界部とHiatusの2つの狭窄部を認め,Hiatus Hernia(横隔膜裂孔ヘルニア)が存在することになる.これらの狭窄部は,いわゆる生理的狭窄であり内視鏡の挿入により柔軟に対称的に開き,胃内挿入を許す.何か器質的な病変が存在する場合は挿入を妨げたり,非対称的な開き方をする.
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