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編集後記
川井 啓市
pp.1170
発行日 1982年10月25日
Published Date 1982/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108789
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ERCPの診断の現況については本号に詳しいが,この専門用語をみるとき,いつも思い出すのは国際学会でのEPCGとの椅子の取り合いであった.この間の事情は既に,本誌に竹本教授と高木博士との共著論文(“内視鏡的膵・胆管造影法の英文略称”「胃と腸」10:1470,1975)に書かれていたが,確かメキシコでの世界消化器病学会,したがって8年前のことであった.すなわちこのシンポジウムの席で日本で生まれたEPCGという専門用語が欧米研究者の共同作戦にあって,ERCPに取り換えられたのである.
その当時,この技術の習得のためにいかに数多くの研究者が日本を訪れたことであろうか.1966年東京での世界消化器病学会や日本における胃癌の早期診断の手技の見学と共に,日本の消化器病学を世界に知らせる契機になったものである.しかしながら,本邦で生まれ,定着したこの診断学もその後一度疾病の多い欧米に紹介されるや,研究のレベルは一挙に縮まってきた.それにしてもERCPが専門用語として採用されるに及んで,日本で生まれたEPCGも所詮日本人にとっては外国語での新造語でしかありえず,したがって専門用語としての市民権を取ることの難しさを痛感させられたのである.他方,この技術を出発点として研究の彼我の進展をみるとき,日本人が研究のパイオニアであると共にその道の第一人者の地位を築き上げるためには何をなすべきか考えさせられることが多い.これら技術の開発に関係された著者らの論文から,これからの展開を読み取って欲しいものである.
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