胃と腸ノート
Shinya式大腸ファイバースコープ(3)―S状結腸・横行結腸のたわみ防止
岡本 平次
1
,
Hiromi Shinya
2
1昭和大学医学部藤が丘病院病理科
2Chief of Surgical Endoscopy Unit, Beth Israel Medical Center, New York. Clinical Professor of Surgery, Mount Sinai School of Medicine, New York
pp.1365
発行日 1982年12月25日
Published Date 1982/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108670
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4.Abdominal manipulation
今回は助手による体外からの腸管の保持(abdominal manipulation)について述べる.症例によっては,スコープを引き戻すと腸管腔は近づいてくるが,次いで押し進めると逃げてしまうことがある.これはS状結腸や横行結腸で余分なたわみやループを形成するからである,それらを防止しスコープを進めるのに必要な補助がこれである.例えばS状結腸を保持させるには助手の手掌で左下腹部を左側方へ圧し下げるようにすればよい(Fig. 5a).有効な圧迫部の場合には助手がスコープの抵抗を自分の手掌に感じられ,術者がスコープを円滑に挿入できることである.これはスライディングチューブの代用となる重要な補助手段である.次いで横行結腸を保持するには,左上腹部から右上腹部へと持ち上げるようにする.大半の症例はこの手技で右側結腸への挿入が可能となる.また心窩部やや右側を軽く押すのみで簡単に上行結腸への挿入可となる場合がある(Fig. 5b).これは肝彎曲部にあるスコープ先端が腹壁より後壁側へと押されることにより,上行結腸へと近づき,挿入が容易となるからである.実際には,腹壁を軽く押すと,ファインダー内の視野が遠ざかることなく,むしろ管腔がスコープに接近してくる部位を探して保持させる.スコープが一旦上行結腸へ挿入されたら,腸管の保持は必要なく,その進入を妨げるだけであり,直ちに助手の手は腹壁から離されなければならない.
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