Japanese
English
今月の主題 残胃の癌
序説
残胃の癌の現状と問題点
Editorial
長与 健夫
1
T. Nagayo
1
1愛知県がんセンター研究所
pp.1293-1294
発行日 1982年12月25日
Published Date 1982/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108636
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かつて潰瘍なりポリープなり癌なりで胃の切除術を受けた患者の残胃に長年月を経た後,異常所見を見出した場合には,慎重な心構えが必要である.初回の胃切除の理由が何であれ正確な診断の重要性については今更言うまでもないが,X線検査にしても内視鏡検査にしても,それが切除をしていない胃に比べて困難を伴うことは多くの臨床医の指摘するところであり,特に幽門輪という括約筋を持たない胃においては,吻合部を中心とした胃粘膜の詳細な検索には一層の工夫が必要である.残胃に見出される限局性の病変の大部分は吻合部潰瘍か癌で,特に後者では再手術を行いえないほどに進行したものが少なくない現状であるので,早期発見の方法はこの領域においても速やかに改善されねばならず,全国的にみて胃切除を受けた人の数は十万を超えるものと推定されるので,一層この感を深くする.
初回の胃の切除の理由が癌であった場合には,まずその再発が疑われる.この場合,残胃の癌の性状と共に既に切除された胃癌がどのような状態であったかを知ることが大切で,組織所見を含めた正確な記録が残っていれば,断端遺残癌か,胃壁外からの侵襲によるものか,あるいは異時性の重複癌ないし多発癌か,は大方察しがつく.初回の手術が潰瘍やポリープであった場合には,残胃に新たに癌が発生したことになる.この場合もカルテの記載のみでなく切除胃についての組織検査を含めた所見証拠が保存されているのが望ましく,そうでない場合は推定の域を出ない.
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