胃と腸ノート
直腸指診のすすめ
小林 世美
1
1愛知県がんセンター第1内科
pp.1064
発行日 1979年8月25日
Published Date 1979/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107740
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消化器官は,口から肛門までを意味することは言うまでもない.ところが日本では,消化器病の専門医と自認する人々で,ルチンの外来診察で肛門まで診る人が意外に少ない.アメリカでは,初診の基本事項として直腸診を学生に教えている.したがって消化器科の医師は,すべての患者で直腸診を行う.日本では,大学のポリクリで,これを教える先生は極めて稀である.この1つをとってみても,日米の臨床医学教育の根本的相違がうかがえるように思われる.そこで私は,少なくとも消化器科を標榜するすべての先生方に,初回の外来診察において,眼瞼結膜で貧血の有無をチェックすると同様に,直腸指診を必ずやって頂くようおすすめしたい.
私はここ数年間,全患者の初回診察と再来患者で年1~2回の直腸指診を実行している.その経験から多くを学んだ.極言するならば,直腸指診は,消化器科外来における診察行為のほぼ50%を占めるのではないか.換言すれば,直腸指診なしでは,消化器疾患に関する診察の約50%を施行したにすぎない.口腔内をのぞいたり,腹部の触診だけで終わっては,得られる所見が余りに少ない.
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